大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和28(あ)2315 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人江口繁の上告趣意第一点について。

被告人が下駄を以て被害者Aに暴行を加えたことは第一審判決挙示の証拠によつ

て認め得られる。仮りにその挙示する証言乃至供述において下駄による暴行か否か

の点につき明確な断定的な証拠を認め得ないとしても、下駄による暴行であること

も推知し得る程度の証言乃至供述がある以上、これを採つて事実認定をなすことは、

経験則又は採証の法則の違背とはならない。また下駄による暴行でない旨の証言が

挙示の証拠中にあつても、これは認定事実に反する証拠は採用しなかつた趣旨と解

すべきである。それ故に原判決が第一審判決挙示の証拠によつて下駄による暴行の

事実を認め得られると判示したことには、所論のような違法はなく、従つて所論憲

法違反の主張はその前提を欠き採用することができない。

同第二点について。

第一審判決は、所論被害者の後頭部の腫瘤が被告人B並に第一審相被告人Cの暴

行に因つて生じたものであることを認定している。そうして原判決は右の傷害の程

度等に関する鑑定書によつて明らかな事実と第一病院入口において被害者Aを自動

車から搬出するにあたり手を滑らして頭部を地上に落した際の情況に関する証人D

の供述とを対比考量した上で、被害者の頭部を地上に落したことと前記後頭部の傷

害とは何等の関係なきことを明認できると判示しているのである。してみれば原判

決を以て、不条理な臆測判断、審理不尽、適正を欠く裁判とする所論の非難はすべ

てその理由なく、従つて憲法違反の主張はその前提を欠き採用に値しない。

同第三点について。

原判決は被害者Aの死因につき、「同人がヒロポン中毒患者であつたとしてもそ

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れが直接又は副合的死因でなかつたこと、鑑定書の記載及び第三回公判における証

人Eの供述に照らして明らかである」と判示しており、これ等の証拠によればヒロ

ポン中毒の点を死因について考慮する必要のないこと明らかであるから、原審に対

する審理不尽の非難はあたらない。従つて所論憲法違反の主張はその前提を欠くの

みならず、その実質は単なる訴訟法違反の主張に外ならないから採用することがで

きない。

また記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よつて同四〇八条により主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

昭和二八年九月一五日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 河 村 又 介

裁判官 小 林 俊 三

裁判官 本 村 善 太 郎

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